先日、ヨガ哲学入門ワークショップを開催し「アパリグラハ」について学びました。
アパリグラハとは、必要以上のものを持たず、シンプルに生きることを目指す考え方です。物や状況に対する執着を手放し、「これがなければ幸せになれない」といった思いを捨て、今持っているもので満足することです。要するに、心の自由や平穏を得るために、物質的なものへの執着から解放されることが大切だという教えです。
私が「アパリグラハ」の実践を意識し始めたのは、30代の初めのことでした。その頃、お付き合いしていた人から突然連絡が途絶え、数ヶ月後に彼から届いた連絡で、私が彼の部屋に置いていた物を全て処分してしまったということを聞きました。
その時、とてもショックを受けました。まず、そんな軽率な人と付き合っていたこと。そして、大切にしていた品々が勝手に処分されていたことが心に深く傷を残しました。洋服、ヨガマット、ヨガの本をはじめ、中には亡き父の思い出が詰まったスーツケース、母が大切にしていた藤のカゴ、母からプレゼントされたリネンの上着が含まれていました。怒りや落胆、動揺、悲しみが一気に湧き上がり、両親の思い出の品を失ったことがしばらく心に深い傷を残しました。
その時期、私はヨガ哲学を深めたいと思い始めていた頃でした。怒りや失望、悲しみに向き合いながら、アパリグラハを実践し続けました。心が落ち着くまでには何年もかかりましたが、その過程で気づくことがありました。スーツケースやカゴ、リネンの上着は失いましたが、亡き父に対する思い、そして母が元気に過ごしていること、母からもらった上着に対する感謝の気持ちが、今も現実にしっかりと自分の中に存在していることに気づくことができた時、ようやく心の中で整理がつきました。
その体験を通じて、今でも、アパリグラハをはじめとするヨガの哲学を実践し続けています。日々の練習を通して、どのような出来事が起こっても、自分をできる限り良い状態へ導けるよう心がけています。人生では、予期しない出来事や望まないことが起こることもあるでしょう。そんな時こそ、真実を見極め、冷静に判断できる自分でありたいと願っています。

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